平成30年度 第3学期始業式 校長式辞

あけましておめでとうございます。まず年頭にあたって願うことは、今年は災害のない、誰もが心おだやかに暮らせる日々が続くことです。そして総社高校の生徒の皆さん、保護者の皆さん、そして総社高校に関わってくださる方々、そして先生方にとって幸せ多き1年となることを願います。ただ、幸せとは誰かに与えられるものでも、また偶然にやってくるものでもありません。幸せは皆さんの身の回りに必ずあります。でも気づくか気づかないかぐらいの光を放っているだけなのです。だからこそ、幸せは自分で探しださなければならないのです。そのために必要なことは何でしょうか。それは自分がいろいろな人に支えられて、今ここにいることへの感謝の思いだと、私は思っています。
今年の元旦はとてもよいお天気でした。私は、今年も初日の出を見ようと自宅近くの小高い山に登って、初日の出を待っていました。そこは初日の出を見るための名所でも何でもないのですが、何人かの人がそこにいました。自然と「おめでとうございます」と挨拶を交わします。知らない人とも自然と挨拶を交わす、とても気持ちのよい元旦でした。東の方角の山の端を見ると、初日の出までもう少し時間がかかりそうでした。
ここで少し話を変えますが、皆さんも童謡唱歌「夕焼け小焼け」という歌を知っているでしょう。「夕焼け」は誰もが分かると思いますが、では「小焼け」とはどういう意味なのでしょうか。調べてみると「小焼け」には意味がなく、単に語調を整えるために添えられた語ということが分かりました。ただ、私はかつて「小焼け」とは「太陽が沈みきった後、一旦暗くなった西の空の雲がもう一度輝く現象のこと」であるという説明を聞いたことがあります。ただ、この説明は無理矢理な解釈として否定的に捉えられています。語調を整える「小焼け」という言葉単独では辞書には掲載されていません。しかし、私はかつて説明を聞いた「小焼け」というものを見た体験があります。以前佐賀県に行った時、佐賀市内に宿がとれず、隣の多久市というところに宿をとったことがあります。佐賀駅から唐津線というローカル線で多久市まで向かっていた時のことです。ちょうど夕方の時間帯で、桃太郎線を思わせるような単線を進む2両編成の列車に乗っていると、まさにその時進行方向にある山の端に真っ赤で大きな太陽が沈みかけていました。あわただし日々の連続でのんびりと夕陽を見る余裕を失っていた私にとって、ひさしぶりに見る夕陽に旅愁をそそられるとともに、心洗われる思いでした。何も考えることなく見ていると、夕陽は瞬く間に沈んでいきました。「ああ沈みきったなあ」と思っていると、時間にしてほんの数秒ですが、夕陽が沈んだ山の稜線に沿って鮮やかなオレンジのラインがもう一度パッと輝いたのです。一瞬だけの取り戻した輝きに感動しながら、「これが小焼けかもしれない」と思いました。なぜか私にとって強烈な思い出になっています。
話は今年の初日の出の話に戻ります。初日の出を待っていると、東の方角の山の稜線が、あの佐賀で見たのと同じオレンジラインの輝きを一瞬放ったのです。「あ、初日の出だ」と思って待ち構えていると、その輝きはほんの数秒で色あせました。そして数分後に初日の出が始まりました。「あ、あのオレンジのラインは日の出の小焼けだったのだ」と気がつき、今まさに登り始めた初日の出の風景が、佐賀で見た風景と重なり、自然の一瞬の神秘に出逢えたことを幸せに思えました。今年も私は自然の神秘という思わぬ感激とともにこうして新年を迎えることができた、でもそれは自分の力だけではない、家族を含めた周りの人に支えられているからだと思いました。そして、今年も総社高校で学ぶ生徒の皆さんとともに歩んでいけること、そして総社高校の先生方と一緒に働けること、それは決して当たり前のことではなく、幸せなことなのだ思いました。この気づきは初日の出が、今年も頑張れよと、私にくれたプレゼントだったのかもしれません。身の回りにありながら一瞬輝くだけの幸せは、まさにこの「小焼け」のようなものなのです。幸せは、身の回りにあり、時に一瞬の輝きを放つ、その輝きに気がついて、その幸せに感謝する、それが冒頭でお話しした「幸せ多き1年」へとしていくために必要なことだと思います。
さあ、今日から学校としての1年―学校の1年は新入生が入学してくる4月から、3年生がこの学び舎を巣立っていく3月までです―の締めくくりの3学期の始まりです。多くの3年生にとって勝負のセンター試験、2年生はそれぞれの進路開拓の扉を開けための第一歩を踏み出す、1年生は総社高校の屋台骨の存在となるためのスタートを切る3学期の開始です。今年の干支はいのししです。いのししのごとく猛ダッシュの1年としていきましょう。

平成31年1月7日
岡山県立総社高等学校
校長 三谷昌士

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