平成三十一年度岡山県立総社高等学校始業式 式辞

創立102年、新世紀2年目を迎える岡山県立総社高等学校は、本日280名のフレッシュな新入生を迎え入れました。そして今、平成31年度1学期始業式にあたり全学年揃いました。本日から総社高校の新しい活動が再び始まります。新しいスタートであり、大きな区切りである1学期始業式にあたり皆さん一人ひとりが、抱負や希望を抱いていることでしょう。その抱負や希望を形あるものにしていくために、生徒・教職員一同力をあわせて取り組んでいきましょう。

4月1日に発表された新元号「令和」。 最初耳で聞いただけでは、どういう字を書くのかわかりませんでしたが、素敵な響きだなというのが第一印象でした。その後の詳しい報道によよって、「ご令嬢・ご令息」という表現があるように「良い・優れた」の意味もある「令」と、「調和・平和」の「和」で「令和」という漢字表現であること、(定かではありませんが、「令和」の英訳は「Beautiful Harmony」という話も聞きました)、そしてこの元号が万葉集を出典とすることを知りました。皆さんもテレビや新聞で見たと思いますが、典拠とした箇所は、「万葉集」巻五 梅花の歌三十二首の序「初春の令月にして、気淑(よ)く風和(やはら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす。」この箇所の意味は、万葉集研究家の中西進先生の訳を引用すると「時あたかも新春の好き月、空気は美しく風はやわらかに、梅は美女の鑑の前に装う白粉のごとく白く咲き、蘭は身を飾った香のごときかおりをただよわせている」(中西進著『萬葉集 全訳注』)

ただ万葉集のこの表現は漢籍(中国の古典)を典拠としていると考えられています。その典拠とされているのが、後漢・張衡「帰田賦」「仲春令月 時和し 気清らなり」(その意味は「春という時の穏やかさ、そしてその春の空気は清らかである」)です。私もここの部分を典拠としてると思いますが、大切なのは万葉集の梅花三十二首の序の文章が単純な漢籍の引用ではないこと、梅の花の歌というアレンジを加えて新しい万葉集の表現世界を構築しているところなのです。日本の文化には、中国の文化など東南アジアの文化を積極的に取り入れたという歴史があります。しかし、単にそのまま取り入れるではなく、例えば大伴旅人の梅花の歌の如く、漢籍などの典拠をもとにして、アレンジを加え新たな表現世界を築いたというところに大きな特色があります。積極的に外なる世界の文化を吸収し、それをもとにして新たに日本オリジナルなものを築き上げていくということに日本文化の優れた点があるのです。漢籍をもととして、新たに梅の花の世界を描きながらも、もともとの「時和し 気清らなる」という意味も含ませている。そのことによって漢籍と万葉集という二つの表現世界が重なり合う、深みのある表現が生まれてくるのです。この深みこそが日本文化の味わいなのです。万葉集の「初春の令月にして、気淑(よ)く風和(やはら)ぐ」という表現世界の背後に「時和し 気清らなり」という意味も込められています。そう考えると新元号「令和」の持つ味わいが深まっていきます。

「空気は清く澄みわたり、風はやわらかくそよいでいる」「春という時の穏やかさ、そしてその春の空気は清らかである」。この二つの意味が込められていると考えられる「令和」という時代が本当に穏やかで文化の香り豊かな時代になることを願います。

 

結びとして君たちに2つのことをお願いをします。

1つ目。 挨拶を大切にしましょう。挨拶をされていやな気持ちになる人はいません。外部の方に笑顔で元気よく挨拶をすることが学校としての品格を示します。また、校内において互いに挨拶を交わすことで気持ちが豊かになり、ともに頑張ろうと思えるようになります。気持ちよく挨拶する生徒が集う学校であることを総社高校の魅力の一つにしたいのです。

次に、私は授業の様子、学ぶ生徒の姿を見ることが私は大好きです。4月当初から登校時間や授業、そして休憩時間にも学校を見て回ろうと思っています。授業している教室の後ろに入ることもあると思います。突然教室の後ろのドアが開いても気にせず授業に集中してください。以上で式辞を終わります。

 

                        平成31年4月8日

                      岡山県立総社高等学校

 校長 三谷昌士

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